録画しておいたドラマ版下町ロケットのロケット編を見終わりました。
主演の阿部寛さんをはじめ、吉川晃司さん、安田顕さん、真矢ミキさんなど豪快キャストでお送りしてきたロケット編がこれで終わってしまったわけです。
いやー良い内容だったなーと思う間もなく、つい最近本が発売になった下町ロケット2の内容にあたるガウディ編に突入するあたり、商魂たくましさを感じます。原作を先に読んでいたので、ロケット編の話が進むペースが早いなーと思ってたんですよ(笑)
率直な感想は「羨ましいなぁ」
ロケット編終了のスタッフロールを見ながら私が感じていたことは、 自分の人生でこんな瞬間を味わったことがあるかなーということでした。
タイトルからしてネタバレにならないと思うので書きますが、物語のラストではロケットの打ち上げが成功します。その瞬間、これまで苦楽を共にしたり、ある種の対立関係になっていた多くの関係者が一つになり大団円を迎えるわけです。
打ち上げのために頑張ってきた技術者達はここで大きな達成感や満足感を得ています。これまでの苦労が報われる、最高の瞬間なのではないでしょうか。
技術者に限った話ではないですが、自分の仕事が報われたと感じることは次の仕事やステップアップへの原動力となる。これは非常に大切な事です。
とあるエンジニアの現実
私は大手メーカー傘下のエンジニアとして、それなりの規模のプロジェクトに関わり、一定の評価を得ることができました(主に製造ラインで使用される装置の制御ソフトの設計、開発、検査、保守を担当してました)。
しかし、 「やった!」と言えるような達成感や充実感を得られたことは正直あまりなかったように思います。
1つの仕事をこなしたら、「今回も何とか生き延びることができた」、「また次のプレッシャーと戦わないといけないのか」というような後ろ向きな感情が目立ちました。
これでは達成感や満足感どころではなく、ステップアップしようという気持ちになんてなれるわけがありません。
湧き上がる悔しさや怒りなどの感情で何とか乗り切ったことも度々ありますが、そればかりでは精神が摩耗してしまいます。たくましくなってはいるけれど最初に抱いていた志がどんどん擦り減っていく感覚でしょうか。
その変化は、成長や現実を知ることとも言えますが、それが良いのかどうかは人によって判断が異なるところです。
青臭いと思われるかもしれませんが、達成感、満足感がある程度は自然に感じられるような仕事じゃないと、継続するのは難しいと考えています。だたしこれは世代や家族構成によってかなり違いますよ。
達成感、満足感のきっかけ
達成感と満足感は違うものですがここではそれに触れず、達成感、満足感はどうやったら得られるのかを少し考えてみました。思いつくままに挙げていくと、
- 人から感謝される
- 人から必要とされる
- 人の役に立つ
- 人から評価される
- 金銭を十分に得る
- できなかったことができるようになる
- モノやサービスを完成させる
- 作業、行為そのものが楽しい
似ているもの、表現が曖昧なものもありますが、大体このあたりでしょうか。達成感、満足感を減らしたり消したりするものは上記とは逆のものと考えればいいわけです。人によって性格や適性が全く違うので、何が重要かを一概に言うことはできません。
これを技術者視点で見てみると、
「人から感謝される」「人から必要とされる」「人の役に立つ」
→実際に利用するエンドユーザの姿をイメージしにくいことが多く、自分の仕事の価値を感じにくい
「人から評価される」
→技術的な優劣よりも、売り上げへの貢献で評価が決まるなど、納得できないことも多々
「金銭を十分に得る」
→貰っているお金よりも、失った時間や健康が大きいと感じてくる
「できなかったことができるようになる」
→知れば知るほど自分の無力さを痛感してしまい、人によってはグレてしまう
「モノやサービスを完成させる」
→納期や品質のプレッシャーのせいで、完成した喜びよりも苦行から一時的に解放された感覚が強くなる
「作業、行為そのものが楽しい」
→好きなものもノルマや責任がついてきたり、やり方を指定されると楽しめなくなってくる
うん、これはもう技術者とかやってられませんね(笑)。今すぐリクルートに登録だね。
さすがにここまで書くと後ろ向き過ぎる気もしますが、ほとんどの技術者が経験済みのことだと思います。 技術者が達成感や満足感を得られる機会というのはそんなに多くなく、そう感じられるだけの感性を持ち続けることは簡単ではありません。
私の感じた羨ましさの正体
話を元に戻しまして、下町ロケットを見終わった私が何故羨ましいと感じたのかを考えてみました。
そもそも自分が技術者になったきっかけは、発展していく技術に対する知的好奇心や、未知の分野へ挑戦する意志のようなものがあったからです。多くの技術者も多かれ少なかれ同じような気持ちがあったのではないでしょうか。
それなのに、毎日の業務に忙殺されたり、自分のやりたいことと違ったり、雑務が面倒だったりして気づいたら最初に抱いていた志をすっかり忘れて、ただただ業務をこなしていく日々。会社という組織にいるんだから当然だけどね。
自分の望む分野で純粋に研究や開発に没頭できる人材なんてほんの一握りなんですからね!よほど能力が高くて、さらに能力のアピールができる人じゃないと無理。
ISOやらプロセス管理やら、よく分からない教育、監査、営業活動等々、自分が何をしているのか分からなくなることも多々あります。
劇中の阿部寛演じる佃社長は、会社経営という激務に追われながらも大きな夢を持ち続けていました。個人的な意見ですが、大きな夢を持ち続けるためには強靭な意思なんてあって当然です。
それに加えて、 周囲に認めてくれるだけの環境や、巡りあわせの運、その他色々な要素が上手くかみ合ってはじめて成立する。下町ロケットでは、社長の想いを中心として周囲を巻き込きこんで一つの大きな流れとなり、数々の問題を乗り越えて最終的に目的を果たします。
夢を持ち続けることができた佃社長の強い意志力、それを支える仲間や環境、そういったものに私は嫉妬してしまったわけです。
それとプレゼン能力だね!技術者なのにあれだけ上手く自分の想いを人に伝えることができれば、そりゃ周りの心も動きますよ!いやあれはイケメンだからかなー(笑)
ちなみに、熱い想いは大事ですが何にもない青二才が口だけ上手いことを言っても当然ながら人は動きませんのでそこは気をつけましょう。
そして私は先に原作を読む派なので、これからドラマのガウディ編が始まる前に下町ロケット2を急いで読みたいと思います。